九月

   むらさきのいろを匂わす記憶は垂れ


   階段がいくつも記憶をからかつている


   やりきれぬ記憶波は白く碎けて


   善き記憶のかずを読みおぼろげな凱歌


   泳ぎつかれた記憶もたげては見た夢


   記憶がすべつてゆくわらべうただけ残し


   一本の綱がだらり記憶をだまそうとする


   にたにたとわらい記憶の意地悪な


   大きい掌を見せ記憶真直ぐに来る


   死に伏す記憶善きことをのみ收めしや