八月

   知りすぎた昔で牛鍋が煮える


   肩がないほどに酒仙詩をそらんじ


   胃袋をなだめ小さな闘いよ


   巧まざる抱負のなかで国をさがす


   想いをこめし野糞たり月は遠きや


   ぬけぬけと人生語録いま並べ


   善戦に素知らぬ昼の月がある


   秋を置く罪よりのがれんとする身に


   いじらしき情緒男が首を垂れ


   傷をなめて言葉なけれど思い湧く