六月

   盃を拭くはしなくも他人なり


   盃をいただくばかりここも泳ぎ


   缼けた盃死ぬほどの顔がある


   盃をおもたがるこの心の掟


   古い義理を果す盃くらべてる


   よこしまな胸に盃強いて強いて


   男の盃が読むそんなへだたり


   膨らむ心に盃がころげてく


   ふるさとを消す盃に雪が降るか


   妻の盃におんなを知るおののき