二月

   のがれたつもりの死声が追つてくるよ


   聞き捨てならぬ言葉死が宙に浮く


   いたずらに死を動かして齢の阿呆


   大きい死口説の果てか枯野の果てか


   めでたがる死よ心の花火あがつてくる


   わかれを惜しみゆく死遠くのざわめき


   全き死の顔に春の月を置いて


   短かつた死冬将軍は振り返れ


   死のたわむれと人は言う嘆きたがわず


   さよならの死のやすらけきこちの重たさ