四月

▽昨年、松本で開かれた第十四回長野県川柳大会の協議のなかで、満場一致して中島紫痴郎氏の句碑建立のことが採り上げられ、地元を中心とする常任委員会によつて着実に進行、十一月九日には地鎮祭が、本年三月七日に建設が完了して、この四月九日の佳き日を卜し目出度く除幕式がとりおこなわれたのである。
▽長野県川柳作家のひとしく敬慕するわが紫痴郎翁の句碑がゆかりの地に永く伝えられるということは、ひとり長野県川柳作家の誇りとするのみでなく、全国川柳作家の師表と仰がれるであろう。殊に観光地としてときに文人墨客の往来するこの山ノ内町湯田中界隈に川柳句碑が出現することによつて、いかばかり川柳への認識を盛り上がらせるかを考えるとき慶賀の念措く能わざるものがあるのである。
▽事ここに至るまでは常任委員会の並々ならぬお努力のあつたことは申すに及ばない。寄進についても川柳作家はただに県内のみでなく県外からも惜しまない力添えのあつたことを忘れてはなるまい。それに、地元の観光関係の方々の後援ということも銘記しておきたい。これらは一に紫痴郎翁の人徳の然らしめるところと言うことが出来よう。
▽碑面に「流れ行く水の素直さじつと見る」とある。行雲流水のたたずまいに寄せるこころのおくゆかしさは、翁の日頃の心境そのままというべきであろう。何にしても県内柳界に於ける近来の慶事であることは間違いはあるまい。
▽この時に当り第十五回長野県川柳大会が湯田中で開かれることになつた。県内各地に散在するグループが年一回一堂に参集して、大いに作句熱を昂揚し、旧交をあたためる絶好
な時である。地の利を得て泊り込みで出掛ける観光地としても垂涎の場所柄だ。
▽長野県は戦後、大会を開くことこれで十五回になる。他県とちがつた特長は、毎年開催する会場が違い、その主催側にすべてを委任し、またこれをうべなう親誼を以てつづけられる。独りよがりな、独り天下になり易い大会というものへのブレーキの意味でも、長野県は誇つてよいではないか。