一月

   倍増論いびつな夢をかきくどく


   ダミ声の政治見事なふところ手


   革新保守ひとりの道を突き放し


   言いのがれ来て両翼のいびき伝わる


   ひれ伏すとき組織の底鳴りを聞くか


   小商人の労働に喰らいつく凱歌


   小羊よたかぶれる泥靴を見送り


   背景のものの怪にふれしめる会話


   主義の歓喜に応えしは月のめぐり


   ひた隠し合う横顔のじれる世ぞ