四月

   眸を読まれじと春雨に置く言葉


   いちにちの闘ひといふ手を洗ひ


   胸の勲章を描き互ひに克ちし


   刻む時計刻む生命にまぎれゆく


   知ることの難きひと日をまなかひに


   果てもあれとやゝに疲れし酔ひを待つ


   いづれともなく俗臭の酒を喰らひ


   ふるき人間の底だつたいつしよに眠ろ


   子が酌いでくれるかなしさよ しばししばし


   ずらり子の大き愚かな父の夢を覚ます