十一月

   一枚の構図鴉を動かせず


   月の兔は見てる鴉居睡り


   ほろ〱と鴉ゆめみし濡羽色


   寺の鐘が救ふ鴉は一点に


   壊れたシルクハツトの鴉物臭さ


   尾羽枯れ旅は鴉に大きな穹


   いじわる婆さんだつた鴉廻り道


   鴉は音痴田ンぼにあしが凍てゝ来た


   勲章ぶらさげて夜目の鴉向き合ひ


   けむる雨鴉は羽を洗ふのみ