三月

   事勿れ主義のうまみが拾へた齢


   人肌の限りを越えずいぢめつけ


   乗じ得る手合ひの底でこたへさせ


   一片の煙りうきよと言ひたがる


   人生の余白埋めゆくや月と歩み


   酒うまく天下小さしとも言はで


   小娘の唇を濡らして知り足らず


   老残の求めて淡き誓ひする


   あはれ人こそ銭を読みわるびれず


   人間の弱き振り切る波騒ぐ