一月

      父逝く 昭和三十一年十二月二十七日とふ日

   おごそかに凍る師走の夜の訃歩く


   骨は全く枯れ夢を收めたり


   不足なき齢といふまたしたはしや


   骨と化す一途の道の隔たりよ


   誰もある死のひとつはこゝに釘を打ち


   石もて棺を打つ昼の顔揃ひゆく


   灰は父なりよこたはる酒を与へ


   一徹の父に描ける骨を拾ひ


   骨壷の重さ軽さは胸にひゞけ


   酔へば都々逸のあはれさが返り


   死を葬るや記憶の底をたゝくなり


   墓はいくつもあるそのなかの父の墓


   墓標あきらけき父となし陽は上る


   家運導き給へ遺影向かせる


   八十二高らかな齢父が齢