六月

▽今年は川柳に関する出版物が気前よくどしどし世にあらはれるやうな気がする。岸本水府さんの人間手帖と放送川柳、村田周魚さんの人間雑話、香川県大島青松園に療養するひさご川柳会の句集ひさご、金沢市の森下冬青さんの句集うみなり、近くは麻生葭乃さんの句集福寿草といつたところである。
▽去年、川上三太郎さんは三冊ほど著書を出す予定だつたが、意の如くならなかつたらしい。高学年の青年向の川柳鑑賞書と新川柳歳時記などださうだ。早く世に問はれたいと思ふ。また吉田機司さんは戦後川柳集を編集するために目下整理中の由だが、素晴らしいものが出来上ることを期待しゐる。
▽大曲駒村の川柳大辞典が辞彙の紙型による再刊として此頃発表された。研究家には喜ばれることだらう。また麻生磯次吉田精一教授監修、古川柳研究会のメンバー編集、B5判七百頁の川柳辞典(仮称)が河出書房から来春あたり刊行される。メンバーの顔触れを見ただけで堅実な研究であることがわかる。
▽昭和十六年に出した第一句集大空につぐ私の句集山彦の原稿は出来上つてゐるにも拘はらずまだ印刷されない。装幀もカツトも揃つてゐるのに残念だ。文化年間に松本で出版した田舎樽の再現を活字化さうと前田雀郎さんや母袋未知庵さんから見ていたゞいて原稿が出来上つてゐるのにこれも印刷がおくれる始末。この田舎樽の解説は拙いけれど私が最も適任だと自負してゐるほどの張切り方だが。