六月

   胸板によごれし想ひ酒を流す


   胸板の汗は豪語を生んでゆく


   胸板にたほるゝ女かるからず


   胸板の描く祈りとも妬みとも


   胸板にたかぶれる肌けものめく


   胸板の過去にすがりし林檎ひとつ


   胸板に枕もの憂き齢とする


   胸板をみがく男が瞳に迫り


   胸板に毛はなし今日の無事を寝る


   胸板のうすきに人は燃えあがり


   胸板に降れぎんの雨とほき日へ


   胸板の厚くもならずヘイマンボ