三月

▽長野県内の月刊の川柳雑誌は小諸市の「あさま」と松本市の「しなの」そのほかに長野市の「美すゞ」「競吟川柳」がある。「あさま」は県内を対象にしてゐるが、全国的に見ても発行の早い方の確実な僚誌で、まづその前月の二十日頃には颯爽と雄姿を現はす。見事なものだ。
▽それと対蹠的に「しなの」はいつも遅れてゐる。かうして長野県内には発行の首端を誇る川柳雑誌があるわけだ。片方は着実だが片方は間が抜けてゐる。だけど「しなの」の読者は忍耐強い。兎に角おくれても間違ひなく発行することを確く信じてくれるから、遅延照会のお便りは全くない。有難いことだ。
▽申訳ないみたいだが、なかなかあらためられない。調子よく発行日に出るときもあるが、その翌月はまたおくれる。しかし原稿が少かつたりモヤモヤがあるのではなくて、仕事の都合でやむなくおくれる。
▽内容に就ては不満の点もあらうけれど、誰にも負けたくない私の気概だけは掬んでくれることだらう。信州は日本の屋根だといふ。その信州の真ン中松本は全国を睥睨する位置にある。地方柳誌としての誇りを敢へて掲げるべく、起つて全国を風靡したいとも思つてゐるのだ。
▽川柳界の空気、地位、周圍、環境、反映、立場―何もかも狭く貧しい。川柳作家の名からもう絶対に離れられない宿命を背負ひながらお互ひ川柳を知つた得難い生きる力強さに踏ん張つてゆかう。踏ん張る意慾を駆るべく「しなの」をよくしたい。だから大いに活用して頂きたい