四月

   ゲンナマに夕陽が呉れた強がらせ


   肚読めて一皮むきにお邪魔する


   ご同様野暮用ながら骨っぽく


   先越して見せた勝気のドン詰まり


   頼まれた祝辞いささか抜き放ち


   妨害の欣びと言うボロ隠す


   敢えてキザにつくろうここもひとつ覚え


   推敲の辞世重ねる尻からげ


   政治かくお粗末ちっとばかり聞く


   漕ぎつけて相手ほしさの飛ばっちり


四月
▽いただいた手紙はどれもこれも大切にしておくに如くはないが、孫たちが消印のある書状で変わった切手を蒐集するといって物色するので、丁寧にその部分を水のなかに漬けて貼がす。役に立ったとき、切手のない封筒のまま書状を入れて残しておく。
▽金輪際、切手マニヤに凝っているわけではない。思い出したように、忘れてしまったのではないかと気付いた頃、ノコノコ孫たちの目がこちらを向く。さてはまた始まったかと察して、さがし出してやる。そんなとき目を輝かす。
▽普通のハガキでは魅力がないらしく私製葉書と封筒に集中する。未見の切手の種類をよく覚えていて、それと覚しきときさっと手が出る、いとけなくも可愛い。
▽そんなとき一度読んだ文面なのに妙にもう一度読みたい手紙が出る。平川大史さんの葉書に、いま東京から帰ったところ、自身が作詞したレコードの録音に立ち合ったとのことだが、あんまり川柳の投稿がないが、こんな心掛けがあったのかと嬉しくなる。
▽仙台から電話がかかって来た。炉ばた主人の天江富弥さん。二月号巻頭の「臼杵石仏」がズシリと重く、どうしても観に行きたくなった、平川さんの住所を教えてくれという。わかっているから、名簿で教えてあげる。三月二十一、二日、臼杵に飛行機で翔び平川さんに逢ってくる、よろしく引き合わせを頼むとの懇望だ。
▽大史さんにその向きを伝えるべく、早速葉書を出す。二、三日したら、天江さんの例のご自身の筆蹟の炉ばた便りが着く。俄かに発心して臼杵市に赴く気構えが誌面にあふれる。
▽思い立ったら吉日、という、発止と射込む決行のしおらしさ。私が取りもつ縁かいなと、少し浮わつく。
▽二人の寄せ書きの葉書が届く。臼杵石仏の絵葉書がまばゆい。初めて、だしぬけに相逢う二人の顔がこそばゆい。人生のこまやかさだなと思う。
▽天江さんとはよく逢っている。松本へも松本民芸館を観たくてやって来た。平川さんは永い本誌の愛読者。逢ったことはない。代りに逢って下さった天江さんに感謝。