十月

▽地方誌だから大した部数でないことは決まつているが、それでも外国へ五部だけ発送する。うち、誌友と交換があり、ひとつは従弟のところである。従弟は私の父の弟の長男ということになる。長くシヤトル市にいて、一度日本に来たことがあつたが、指折りかぞえて彼も私と殆ど同じ年恰好になつている筈。戦争に参加したが、私は丙種で徴兵にならず、ついつい戦場で見参ということにはならなかつた。
▽料金別納郵便では取扱つてくれぬので、外国便は切手を貼らなければならない。なるべく毎月違つた切手を貼ることにしている。先方で切手蒐集の趣味があつてこれを大切にしているのではないかとひとりよがりにほくそえむのである。おや、今月もまた違つたのを貼つてくれた、気を利かしてくれる、ありがたいなあ。それとは全然反対に、本誌を取り出すが早いか、封筒は丸くまるめて屑籠へポン――。そうなつたつてしようがない。
▽私は殊更に切手を集めたりしてはいない。外国から来る雑誌や封皮へ貼つた切手をはがしてコレクトしておくわけでなく、趣味のひとのために残しておいて差し上げている。何だかいいことをしたと思う。
▽記念切手が発売されたとしても遮二無二手に入れなければ虫がおさまらない程でなく、売つてくれたから買つたまでの切手で、それを貼りながらニヤニヤして生温かくたのしんでいるのである。
▽外国から絵はがきを貰つた時などすぐ切手の図案を見る。ところ変れば品変る。豪華なのや日本のと比べて見劣りするようなのもある。寄こしてくれるのは学者になつている中学時代の友人である。今までは中学時代の友人だけだつたが、或いは川柳の友人が呉れるようになるかも知れない。
▽肩書きを聞くとちよつといかめしいが、全印総連長野地方連合会書記長の深沢亀太郎君が東独のライプチツシで開かれる国際印刷会議に日本代表として出席することになつたためである。深沢亀太郎君とは長野市のみすゞ吟社主宰の深沢英俊君だ。ソ連からか、ハンガリーか、中国か。待ち遠しい。